数年前までは、大きな企業や組織に入ることが人生の安泰に繋がると言われていました。
特別、自分がやりたい仕事や能力といった明確や指標をもたなくとも、ほぼ一生、保障された生活が送れる時代であったといえます。
しかし近年、終身雇用や年功序列といった制度を維持できる企業が減り、転職をしてキャリアアップをすることが当たり前になってきています。
その転職が、充実した人生をおくるためのステップとなるよう、キャリアデザインの重要性が高まってきているのです。
キャリアデザインやその正しい方法などをご紹介していきます。
記事の目次
キャリアデザインとは?どんな意味なの?
「あの人はキャリアを積んでいる」といった表現をすることがありますが、これは単に仕事の経験といった意味で使用されています。
本来、キャリアは「生き方・人生のビジョン」といった意味の言葉で、キャリアデザインという言葉はその意味合いが強くあらわれています。
仕事を通してどのような人生を歩んでいきたいかを主体的に設計し、実現していく一連の行動が、キャリアデザインです。
「自分にとって働くこととは?」「10年後、どんな仕事をしていたいか」など、具体的な目標の設定をしします。
そして実現するためにはどのような仕事をすればよいのか、その仕事をするためにはどのような能力をつけたらいいのか、といった設計をしていくことで、自身の思い描いた人生を歩んでいくことができるのです。
キャリアデザインとキャリアプランニングの違いとは
ちなみにキャリアデザインとほぼ同じ意味で使用されているのが、キャリアプランニングという言葉です。
しかしながら、キャリアデザインとキャリアプランニングは、少し意味が違います。
これからどうなりたいかということを色々な視点から探り、イメージをデザインしていくのがキャリアデザイン。
キャリアプランニングはこのイメージから、目標までの具体的なプロセスや取り組むべき課題にポイントを置いて計画を立てていきます。
そのためキャリアプランニングのプランは、キャリアデザインのイメージよりも内容が明確です。ここが大きな違いとなります。
キャリアデザインの目的はキャリア形成
キャリア形成とは、キャリアデザインで設計した目標に必要な能力を、実際に身につけていくことです。
たとえば「提案力のある営業マンとして活躍したい」という目標を達成するために、コミュニケーション能力はもちろん、問題解決能力、資料作成力を磨く必要があるでしょう。
目標によっては能力だけでなく、特別な資格が必要な場合もあります。
「国際的に活躍する医者になる」という目標を達成するためには、医師免許はもちろん、英語力を磨く必要や、海外の医師免許や国際的に医療活動を行う団体に関する知識をもつ必要があるでしょう。
メジャーリーガーのイチロー選手や、サッカーの本田圭佑選手も、小学生時代から夢を具体的な目標にしていたことで知られています。
目標に対して、具体的な能力や実績といった正確なキャリア形成を行ったことが、大きな成功に結び付いたといえます。
スポーツ選手の場合は体力的な問題もあるため早い段階での取り組みが目立ちますが、多くの人にとってキャリアデザインはいつから取り組もうと損にはなりません。必要と感じた時にはじめるのが最適です。
キャリアデザインに適した能力をコツコツと積み上げしていくキャリア形成が、思い描く人生への一歩であるといえるでしょう。
なぜキャリアデザインが大切なのか?必要性とは?
結婚、出産、育児、病気、両親の介護など、多くの人が直面するライフイベントの数々。ライフイベントによって、仕事の仕方や生活に大きな変化が伴います。
そんな時にも、「育児休暇の時は、この資格を取っておこう」「40歳を過ぎたら週3日出勤でもやりたい仕事ができる状態にしておこう」といったキャリアデザインを事前に描いていれば、目標の実現に向かっていくことができます。
キャリアデザインをせずに毎日を過ごしていると、ふと気がついた時「自分には何のスキルもない」、「本当はこれがやりたかったはずなのに・・・」ということになってしまいます。
前向きに行動していく気持ちをもつのが難しくなるかもしれません。
忙しく仕事をしているなかでも、キャリアデザインを描くことで目的が明確になり、些細なことではブレない態勢ができます。目の前の仕事にも、より主体性を持って取り組むことができるでしょう。
キャリアデザインをする方法・書き方の具体例について
では、具体的にどのようにすれば自身のキャリアデザインを描くことができるのでしょうか。
正しいキャリアデザインの方法として、3つステップに沿って解説していきます。
1.自己分析をして自分の現状を把握する
まずは、自分自身の現状を把握します。
今まで、どんなスキルをどの程度積みあげてきたのかを客観的にみてみましょう。
どのようなことが得意で、なにが苦手なのか?どういった価値観を持っているのか?自分の強み・弱みとはなにか?というようなことも一覧にしてみてください。
難しい場合は、過去のエピソードを思い出してみるのが効果的です。「~なことで、嫌な気持ちになった」「~をして、~されたことが嬉しかった」「こんな人に憧れていた」というような体験のなかに、自分がどのようなポイントにこだわりがあり、喜びを感じるかが共通して現れているはずです。
周囲の友人や家族に質問するのもよいでしょう。第三者目線の評価をもらうことで、自身では気付かない特徴を発見できることがあります。
それよりも客観的で明確なものは、人材紹介会社や転職サービスサイトの能力測定テストや年収査定です。容赦なく数値で示されるのでショックを受けることもありますが、わかりやすいのでおすすめです。

2.自分自身の夢と目標を描くこと
2つめは、自分自身の夢と目標を描くことです。
10年後くらいの自分をイメージして、「どんな仕事をしていますか?」「家族はいますか?」「どんな所に住んでいますか?」といったように、仕事に限らずプライベートについても、未来の自分自身に質問してみましょう。
イメージしにくい時は、周囲の尊敬できる人や目標にしている人の生活を参考にしたり、「こうはなりたくない」自分を思い描いてから、なりたい自分の要素を洗い出してみます。
「部下は~人で、家は~駅の新築マンション、車の車種は~で~台」というように、具体的な未来の自分を強くイメージできるほど、実現性の高いプランを描くことができます。
「こんな家に住みたい」「この雑誌に取材されるくらい活躍したい」というイメージがあるのであれば、キャリアデザインに使用するノートなどに写真を貼るのも効果的です。
10年後のイメージができたら、それに合わせて5年後、3年後、1年後の目標を細かく設定していきましょう。10年後の目標になっているために5年後、3年後、1年後に達成すべき目標を書き出していくのです。
また、自分が人生のどこに重点を置いているかを明確にしておきます。家族を持つと、仕事中心の生活から家族との時間を大切にしたくなることも。
趣味の時間や友人との時間などを充実させたい場合も、どのようにしたら仕事とプライベートのバランスを保てるのか、一度考えてみると良いでしょう。
3.ギャップを埋めるプランを作成すること
最後に将来の自分に対して。今の自分が不足している部分を洗い出し、ギャップを埋めるためのプランを作成します。
なにが足りないのか、どんな能力を身につければよいのか、スキルを磨くためになにをするか。設定した目標を達成するために必要なことを明確にしていきます。
必要な要素を洗い出してみると、今すぐに行動を起こせることと継続的な努力が必要なもの、緊急性や優先順位によって差が出てくるので、どの要素からどういった順番で取り掛かれば、より早く確実に目標へ到達できるかプランを立てていきましょう。
ポイントは、すぐに行動しやすいステップまで細分化し、継続的なものは自然と習慣化できるよう工夫すること。長期戦になりやる気をなくす恐れがある場合は、自分へのフィードバックができるよう記録することも効果的です。
まとめると以上の3ステップになります。
自分を分析して現状を把握し、夢や目標を洗い出す。そして最後はそのギャップを埋めるためのプランを構築する。これがキャリアデザインです。
そしてここからは、この3つの他に意識すべきポイントを解説します。
自分の強みと弱みもキャリアデザインに組み込もう
キャリアデザインの作業は、自分自身を改めて見つめ直すステップでもあります。
将来の夢をイメージする段階では、自分が本当にやりたいことを考える必要が出てくるでしょう。それまでの経験を洗い出し、弱点や人よりも優れている強みを把握することもキャリアデザインの大切なプロセスです。
キャリアデザインは、こういった強みや弱みを考慮しながら進めていくのがポイント。
しっかりと自己分析ができていないと、本来の自分の希望とは全く異なる方向にキャリアデザインをしてしまう可能性があります。
将来の夢や目標はデザインのベースになりますので、じっくりと自分自身の気持ちと向き合ってみることが大切です。好きなことや嫌いなことからも、自分の本心が見えてくる場合があります。
キャリアデザインはまっさらな状態からイメージを膨らませていけるため、自由にアイデアを出していきましょう。
考えても今一つやりたい仕事や将来の夢が分からないときには、性格や仕事の適性をテストでチェックしてみるのも良い方法です。
性格のテストでは、自分にどのような長所や短所があるのかを知る手がかりが得られます
。協調性やリーダーシップ、洞察力といったさまざまな項目の中で、特に際立って優れているところがあれば、それが自分の強みになるでしょう。
最終的な目標を達成する上でプラスになるかどうかをチェックして、デザインを考えていくことをおすすめします。
マイナスになるような弱みがあってもそれを補うだけの強みがあれば、さほどデメリットにならないこともあり得ます。自己分析の結果をポジティブに捉えて、デザインを進めていきましょう。
必要なら資格の取得もキャリアデザインに組み込もう!
最終的な目標に至るまでの間には、資格取得が必要になることもあるでしょう。
例えば医師や看護師として医療の仕事に携わりたい場合には、「国家資格が取れる学校への入学」という内容をキャリアデザインに組み込んでおきます。
また、英語を使った仕事に就きたい方は、TOEICや英検などの資格取得をキャリアデザインの中に盛り込むと、目標までの道のりがより具体的になります。
資格取得は、希望する仕事に就くための1つのステップです。従って、短期的、中期的な目標の1つとしてデザインに加えておくと無理のない計画が立てられます。
一足飛びに最終目標まで辿りつくのは難しいことが多いですが、こういった短期的、中期的な目標を設定しておけば現実的な道のりが見えてくるでしょう。
ステップごとに目標を達成すれば、モチベーションがぐんとアップします。最終目標に向けて努力を続ける意欲が湧きますので、キャリアデザインの実現もより現実に近づきます。
ホップステップジャンプのスタイルでキャリアアップを目指していくためにも、積極的に取り入れたいのが資格取得というプロセスです。ファイナンシャルプランナーやキャリアコンサルティングなどの資格は、レベルに応じて幾つかの級に分かれています。
こういった資格を取得してプロとして活躍したい場合は、比較的合格しやすい2級や3級を短期的な目標に据え、より上級の1級を中期的な目標にすると最終的な目標まで、段階を踏んで進んでいけるでしょう。
キャリアデザインにおすすめな本4選
初めてキャリアデザインにトライするときには、その道のプロが書いた本を参考にするのも1つの方法です。
1.キャリアデザイン入門
例えば、キャリアデザインに取り組むビジネスパーソンの間でも人気なのが、大久保幸夫の「キャリアデザイン入門」(日経文庫)シリーズです。
こちらのシリーズは基礎編と専門力編に分かれており、キャリアデザインについて基礎から学べる内容になっています。初心者でも分かりやすいとして、職場でも活用されているシリーズです。
2.キャリアデザイン入門テキスト人生設計のためのパワースポット55選
また、キャリアデザインをするためのワークが紹介されているのが、中蔦剛の「キャリアデザイン入門テキスト人生設計のためのパワースポット55選」(学事出版)です。
自己分析や自分のキャリアを見つめ直すための方法が具体的にガイドされていますので、何から手をつけてよいか分からないときにも役立ちます。
学生からも人気が高いテキストですが、本格的な内容であるため社会人からも好評を得ています。
3.自分らしいキャリアのつくり方
高橋俊介「自分らしいキャリアのつくり方」(PHP新書)は、キャリアデザインのプロが著した1冊。
社会人が共感できるような内容になっており、新たなキャリアを築く際のヒントが得られるとして評判です。
4.働くひとのためのキャリア・デザイン
40代のビジネスパーソンからも支持されているのが、金井壽宏「働くひとのためのキャリア・デザイン」(PHP新書)
こちらは、今後のキャリア形成を改めて考えていきたいという方にもおすすめです。
このコンテンツのまとめ
ご紹介した3ステップに沿ったキャリアデザインをしても、思い通りにいかないことや、自身の価値観が変わり目標自体が変わることもあるでしょう。
そのような時、キャリアデザインはどのようにでも描き直すことができます。その時点での自分の夢や目標に対して、新たなプランを立てていきましょう。
自身の変化は成長の過程と考え、前向きに軌道修正していけばよいのです。
キャリアデザインを上手におこない、思い描いた未来に向かってチャレンジしていきましょう。
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