起立性調節障害で高校進学はできる?

起立性調節障害になってしまうと、自分でも自分の体がコントロールできないし、普通といわれる暮らしは送れないし…とお先真っ暗に見えてしまうことが多いものです。心配はいりませんので、この3年間どう過ごすか考えてみましょう。

起立性調節障害は進学できない?

進学できます。ですが、起立性調節障害に理解のある学校でないと厳しいと思います。事情を分かって協力してくれる定時制高校、通信制高校などでないとおすすめできません。

なぜ全日制の公立高校や私立高校をおすすめしないかというと、高校は義務教育ではないからです。欠席日数がかさめば中退や留年もあり得ます。法律的に、欠席日数によって中退や留年というのは「ない」話なのですが、そこは各学校の裁量にゆだねられているところが多いので、学校の規定によって一定期間学校を休むと単位が足りないとして留年を言い渡される学校が多いのです。

起立性調節障害は受け入れ先の学校に理解がないと卒業できないと思います。ただし、起立性調節障害の症状の強さによって条件は変わってきますので、一例として参考程度にお読みください。軽症の方は全日制の公立高校・私立高校でも3年間過ごして卒業することができるだろうと思います。

ここではちょっと不登校気味になりそうな中等度~重症の場合について話そうと思います。

高校生活と起立性調節障害

起立性調節障害は薬物治療にあまり効果が見込めず、非薬物療法(生活などを改善して症状を軽くする療法)が重要なのはみなさんご存知の通りです。

それを学校生活の中でやろうとしたときに、ちょっと障害になってくるのが「集団行動」です。例えば体育に始まって、朝礼や移動教室、課外授業などはよい例ではないかと思います。朝礼や移動教室に伴う姿勢の保持、体育に伴う態勢移動などはとても起立性調節障害と相性が悪いのです。

加えて心配なのが、通学の電車です。高校になると学区内の小学校や中学校に通っていたときとは若干通学事情が異なります。首都圏では電車通学が当たり前ですし、地方でも学区外入学や少し離れた場所への通学などをしなければならない場合があります。移動時間も長くなりますので、不安が募っても仕方ないかもしれません。

また、ほとんどの高校では始業時間が中学よりも遅くなります。5分、10分の差にすぎませんが、中学校よりも遠方に通うことを考えると今よりもっと早起きをしなければならなくなります。早起きが苦手な起立性調節障害で、果たして朝からの授業に間に合うでしょうか。

学校によって異なりますが、「遅刻は3回で欠席1回とみなす」などのように遅刻も欠席に数えられることがあります。高校によっては各科目ごとに欠課の数がそのまま欠席の数になってしまうため、朝1,2時間目に主要な教科が入ってくる時間割になっていた場合に主要教科の単位が取れないということも起きます。

起立性調節障害は10年前よりかなりメジャーに知られるようになってきた疾病ですが、知られてきたのは名前だけのような気がします。名前だけなら調節障害よりもむしろ睡眠障害のほうをよく耳にします。名前だけで、周囲の人間がどうサポートすればよいのか、どのような生活リズムだったら無理がないのかということを考慮してくれる学校はまだまだ少ないと思います。

学校の選択肢

朝早くから学校に通わなくてよいとなると、定時制高校と通信制高校が選択肢として挙げられます。症状の重い軽いによって違ってくると思いますが、定時制高校と通信制高校の最大の違いは通学です。

定時制高校も通信制高校も、さまざまな事情がある生徒が通ってくるので起立性調節障害などには大変寛大です。起立性調節障害についての知識を多く持っている先生もいるでしょう。同級生の理解も得られやすいかと思います。みなそれぞれに事情を抱えているからです。

ですが、定時制高校は原則週5日毎日学校に通うという点で全日制高校と同じです。中には出席日数がかなり少なくても進学できる私立の定時制高校などもありますので、調べてみるとよいでしょう。ですが一般的に、定時制高校と全日制高校の違いは「始業時間と1日の授業数」のみ。カリキュラムは同じで、定時制高校のほうが1日の時間数が少ないため、卒業まで4年かかるという違いと、昼間部という午後から始まるタイプと夜間部という夕方から授業が始まるタイプがあります。

そのようなシステムだとちょっと無理だという方には通信制高校をおすすめします。通信制高校の中でも、通信コースを選べば学校へ普段通う必要はありません。自宅で勉強できます。

ひとつ心配なのがスクーリングだと思います。スクーリングは対面式の授業で、どの通信制高校にも必ず設定されています。スクーリングに出席しないと単位が取れませんので、スクーリングへの出席は必須です。

私が働いていた通信制高校にも、数名起立性調節障害の生徒さんがいました。スクーリングは月に1回という通信制高校でしたが、彼らにはそのたびに保護者の方が同行してきていました。保護者の方は、スクーリング会場までお子さんを連れてきて、終わるまで近くで時間をつぶしていた方が多かったです。スクーリングには保護者控室を設けていたので、そこで時間を過ごす方もいらっしゃいました。

スクーリングに関しては、月に1回というのは標準的か少し多いくらいでしょうか。少ないところだと1年間の間に3日、5日という場合もあるようです。通信制高校は学校によってシステムがかなり違いますので、詳細は資料を取り寄せて比較検討してみることをすすめます。資料は一括請求できますので、通学可能な範囲内を一気に調べられます。

無理に「普通」は逆効果?

起立性調節障害になったのが中2の時、という男性を知っています。現在は造園関係の専門学校を卒業して公務員試験を受け、ある地方自治体に勤務しています。

彼は「普通」にこだわって、理解のある私立高校に進みました。やりたい部活もあったので、半ば部活推薦のような形で進学は決まりました。部活推薦といっても、中2の後半から中3まではほとんど学校へ行けていませんので、学校の部活に参加してはいません。彼の進学は、彼の指導に当たっていたクラブチームの監督のつてで決まったそうです。

私立高校へ入学してからも症状は治まりませんでした。高校1年生の時の通学日数はわずか2日です。全日制の私立高校だったので、クラスメイトからは覚えてもらえず、たまに学校に行っても、完全なお客さん。クラスメイトの「誰?」という視線にさらされるのは起立性調節障害の症状よりもつらかったといいます。

高校2年生では少し学校に行ける日数も増えてきて月に1回くらいになったのですが、怖くてクラスには行けず、保健室登校に切り替えました。結局、高校3年生になるとかなり症状は落ち着きましたが保健室登校を出ることはできず、全日制の高校に行ったにも関わらず友達はひとりもできずに終わりました。部活には顔を出せたのですが、仲間にしていれば「授業には出ないで部活に出るサボリ」とみられてしまい、結局1年生の半ばで部活を辞めてしまいます。

先生の理解はある学校だったので、卒業はできました。卒業後は前述したとおりの進路を歩き、現在は23歳になりました。症状が完全に収まったわけではありませんがたまに休む程度でちゃんと通えているようです。

彼に話を聞いたところ、「つらかったのは周りの理解のなさ。40人学級だったので、運動会も体育も自分が休めば影響が出る。運動会は全員リレーがあったので、自分が休むと誰か1人が2回は知らなければなりません。そうしたことがすべてストレスになり、「クラスを外してほしい」と心の底から願ったと言います。楽しみにしていた部活で否定されたことも大きなストレスになりました。

自分が朝学校に行けなかったのはさぼっていたからではない。それは病気のせいなのだということを訴えましたが信じてもらえず、「なんでも病気って言っておけば済むと思ってんじゃねーよ」などという心無い言葉も彼に刺さったようです。

そのストレスがたまったせいか、鬱っぽくなってしまったり家庭で暴れたりした時期もあったようです。高校をどこを出ていようが、彼の最終学歴は専門学校卒、職歴は地方公務員です。高校に進学するときは「普通でないと世の中に出たときに困る」と思っていました。でも世間は最終学歴しか見ません。それがわかっていたらもっと楽に高校時代を送れたと後悔しているといっていました。

起立性調節障害の我慢は2~3年

起立性調節障害は永遠に持っていなければならない疾病ではありません。軽症のものだと治療を始めて2~3か月、重いものでも適切な治療を行えば2~3年くらいで社会復帰できる例がほとんどです。

人生は高校で終わりではありません。通信制高校のようなゆるやかなカリキュラムの中で環境調整や心理療法などに取り組み、リズムを取り戻して大学や短大、専門学校に進学する子も多くいます。通常は女子のほうが若干多いといわれる起立性調節障害ですが、私が働いていた通信制高校には男女同数くらいの子がいました。

一番症状が重く見えるのはやはり高校1年生のとき。ホルモンの関係などもあるのかもしれませんが、高校1年生の時は全然学校に来られなかったり、くるのが午後からだったり、テストも日中は来られないので夕方来て別室受験したり、という感じでした。

スクーリングは前述のとおり保護者の方が同行してくることがほとんどでしたが、3年生になると少し様子が変わってきました。朝から学校に来られるようになったり、授業中に不安発作を起こさなくてよくなったりと、専門家ではない私の目から見ても「よくなってきたのかな」という感じがしたものです。

学力には問題ありませんでしたので、それぞれみな次のステージに進学していきました。起立性調節障害になってしまった場合、中学3年間と高校3年間は調整の時間にあてて、心を楽に過ごすことによって、人生トータルで見たらOK!というようになったらよいなと思っています。

参照サイト:日本小児心身医学会
http://www.jisinsin.jp/detail/01-tanaka.htm

コメントを残す